前回の続きです。自分たちとは別の生き物である大人という存在が、子供の視点から生き生きと描かれています。早速、スクリプトと対訳をみていきましょう。
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Melody’s farther:You in the Boy Scouts, Donald? メロディの父:「ボーイスカウトに入っているのか、ドナルド?」
Melody:Daniel. メロディ:「ダニエルよ」
Melody’s farther:Daniel? 父:「ダニエル?」
Daniel: No, the B. B. ダニエル:「B.B.の方に入っています」
Melody’s farther:I was in the Boy Scouts. Marvelous, it was. All those steamin’ hot cups of cocoa, suet pudding, sing songs round the campfire. "Oh we're ridin’ along on the crest of a wave, and the sun is..." Of course, some of the things we used to get up to. Dear me. You know, when a new boy arrived we used to mix some boot black and toothpaste and spread it all over... 父:「私はボーイスカウトに入ってたよ」「あれは素晴らしかった」「湯気の立つココア、スエット・プディング、たき火を囲んで唄う歌」“波を蹴って進むときー、太陽はー”と楽しそうにメロディの父親が歌う。母親はあきれたといった表情。「そりゃ、ちょいと悪さもしたけどな」「いやはや」「なんというか、新しい子が入ると靴墨と歯磨きをまぜて塗ってやったもんだ…」
Melody’s mother:Reg, do you mind, we're eating. 母:「レジ(夫の名前:Reginaldの愛称)、食事中よ」
Melody’s grandmother:I always think ham's nicest straight off the bone, you know, Flo? 祖母:「ハムは骨付きに限るわね、フロー」
Melody’s mother:Always is. 母:「そうね」
Melody’s farther:You go to the pictures much, do you David? 父:「映画にはよく行くかい、デイビッド?」
Melody:Daniel. メロディ:「ダニエルよ」
Melody’s farther:Daniel? 父:「ダニエル?」そうだったという感じで言う。
Daniel: Ah, yes, quite a bit. ダニエル:「はい、よく行きます」
Melody’s farther:When I think of the pictures I always remember my father, my father. When I used to ask him for sixpence for the pictures he'd say, "There's pictures on the wall." 'But I want to see the moving pictures,' I used to say. "I'll make them bloody move", and threw his boots at the wall. Dear me. 父:「映画と言えば、いつでも思い出すのは親父のことだな」「映画を観に行くから6ペンスくれというと、“壁の写真でも見てろ”ときた」「動く写真が観たいんだよというと、“そんじゃ、動かしてやる”といってブーツを投げつけて壁をゆらしたもんだ」
Melody’s grandmother:My Ernie always used to say that moving pictures ruin your eyesight. 祖母:「夫のアーニーは活動写真は目に毒だって言ってたわ」
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★Words and Phrase
・B.B.: Boys' Brigade 字幕では「少年軍」と訳されていますが「少年団」の方が一般的かもしれません。
・suet pudding:“suet”は、牛や羊の、腰のあたり腎臓付近の脂です(鳥の餌にも使われるそうです)。“suet pudding”をGoogleで画像検索するとどんな食べ物かたくさん出てきますので、チェックしてみてください。
・get up to:何か好ましくない(例えばいたずらのような)ことをする
・Dear me:“My gosh”と同義で驚いた気持ちを表す言葉ですが、メロディの父親が言いたいのは、“What I used to be like”(かつての自分:そんな頃もあったなあ)という昔を懐かしむ気持ちが込められているとBrianさんが説明してくれました。
・boot black:shoe polish(靴墨)のこと
・ham's nicest straight off the bone:(骨から切り取ったばかりのハムは最高ね)
・pictures: motion picture(映画)のことです。
・quite a bit: quiteは(かなり)。a bitは(ちょっと)の他に“a lot”(たくさん)の意味もあり、ダニエルが言う“Ah, yes, quite a bit.”は(映画はかなり、たくさん観に行きます)を意味します。
・"There's pictures on the wall.":このセリフのpicturesは「絵」や「写真」のことです。
pictures(映画)のために6ペンスを自分の父親にねだったら、壁のpictures(絵や写真)でも見ていろ! と言われたというレジ(メロディの父)のエピソードにメロディの母親と祖母は笑いますが、ダニエルとメロディは「ここ、笑うとこ?」という顔をしています。
レジは自分で映画の話題をダニエルに持ち出しておきながら、「よく観ます」という返事に対して「どんな映画が好き?」とか「一カ月に何本くらい?」という質問はまったくしません。そのあとに続けるのは自分の話ばかり(コミュニケーション能力低すぎ!)です。
でも、レジの態度はけっして嫌な印象ではなく、愛する娘の友達ダニエルを楽しませようとがんばる気持ちがよく伝わってきます。
今回の場面で大人たちはひっきりなしにしゃべり続けます。子供たちは顔を見合わせます。メロディとダニエルは言葉を交わしませんが、気持ちが通じ合っているように見えます。まるでこんな会話をしているように。「ごめんね」「ううん、おもしろいよ、きみのパパ、意味わかんないけど」。
みなさんはどうご覧になりましたか?
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★今日の表現: quite a bit.(かなりね)
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バーで出会った外国人にここよく来るの? と聞かれたら“Ah, yes, quite a bit.”と答えてみてはいかがでしょうか?
“quite”は普段の英会話でよく耳にする表現です。 例えば、
どうだったあの映画? “quite good”(かなりよかったよ)
昨日のパーティたくさん人来た? “Ah, yes, quite a few.”(かなりね)
というわけで、“quite” is quite useful!(“quite”はかなり使えるね!)