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【つぐない】原題:Atonement ① クラス開講日:2016/4/1


4/1のクラスでは、映画のラストに近いシークエンスが取り上げられました。

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★今日の表現:I'll be quite honest with you.

(率直に/はっきり言わせてもらうよ)

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18歳に成長したブライオニー(シアーシャ・ローナン)は過去の偽証を謝罪するために姉のセシリア(キーラ・ナイトレイ)と彼女の恋人ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)を訪ねます。その嘘によって投獄され、人生を狂わされたロビーがブライオニーに言うセリフが今日の表現です。

ROBBIE: I'll be quite honest with you.

ロビー:「はっきりに言わせてもらうぞ」

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“I'll be quite honest with you.”は、「正直言って」「はっきり言わせてもらえば」という意味で、あとには必ずネガティブな表現が来るとブライアンさんが解説してくれました。

例えば、「あの映画どうだった?」という質問に対する返事が“I'll be quite honest with you.”で始まったら、その後には大体“I don’t like it. ”などのネガティブな表現がきます。

否定的な意見を多少やわらげて伝える効果があるようです。会話の出だし表現として使えそうですね。

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ロビーは怒りを込めて続けます。

ROBBIE: I am torn between breaking your neck here and taking you and throwing you down the stairs. Do you have any idea what it's like in jail? Of course you don't. Tell me, did it give you pleasure to think of me inside?

ロビー:「おまえの首をへし折るか階段から放り投げてやろうか迷っているところだ。監獄暮らしがどんなものかわかるまい。僕が刑務所に入って、さぞかし満足だったろう?」

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・quite:かなり

・I am torn between〜:直訳すれば「私は〜の間で引き裂かれようとしている」。

“There are two choices I’d like to do”あるいは“What should I do?”の強意表現であるとブライアンさんが解説してくれました。このセリフの場合、自分を苦めたブライオニーに対して「こやつめ、どうしてくれようか」という怒りを表現しています。

・inside:刑務所の中のこと。“Have you ever been inside?”=「服役したことありますか?」という例文をブライアンさんがあげてくれました。 聞くのがちょっとコワイ質問ですね。

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ロビーが冤罪で苦しんでいた時、その原因を作ったブライオニーは救いの手を差し伸べることがなかったと非難します。そして、改めてブライオニーに問い正します。

ROBBIE: Do you think I assaulted your cousin?

ロビー:「君の従妹を襲ったのは僕だと思うか?」

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・assault:暴行する、襲う、レイプ<<婉曲表現>>

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BRIONY: No.

ブライオニー:「いいえ」

ROBBIE: Did you think it then?

ロビー:「じゃ、あの時はそう思ったのか?」

BRIONY: Yes, and no.

ブライオニー:「わからなかった」

ROBBIE: What makes you so certain now?

ロビー:「なぜ、今は(僕が犯人でないと)言いきれる?」

BRIONY: Growing up.

ブライオニー:「成長したの…」

ROBBIE: Growing up?

ロビー:「成長した?」

BRIONY: I was thirteen.

ブライオニー:「あの時はまだ13歳だった…」

ROBBIE: How old do you have to be to know the difference between right and wrong? What are you, eighteen? Do you have to be eighteen before you can bring yourself to own up to a lie? There are soldiers of eighteen old enough to be left to die by the side of the road. Did you know that?

ロビー:「何歳で善悪の区別がつく? お前は今18歳か? 18歳にもならなきゃ、嘘をついたと認めることができないのか? 知っていたか? 道端でのたれ死んでいく18歳の兵士達がいるんだぞ!」

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・to own up to:告白する、認める

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BRIONY: Yes.

ブライオニー:「ええ」

ROBBIE: Five years ago you didn't care about telling the truth. You, all your family, you just assumed that for all my education, I was still little better than a servant, still not to be trusted. Thanks to you they were able to close ranks and throw me to the fucking wolves.

ロビー:「5年前、お前は真実を語ろうとしなかった! 僕に教養があったとしても、お前やお前の家族にとっては、しょせんただの使用人さ。信じてもらえることはない! お前のおかげで、みんなが結託して僕を見殺しにした!」

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・assume:当然と思う

・servant:使用人

・to close ranks:to be a team, to come together as one group 結託する、団結する、の意味。

・wolves:ロビーを逮捕した警察、刑務所の看守、他の囚人たち、戦争など、冤罪によって彼が被った苦痛を指すとブライアンさんが説明してくれました。“throw me to the fucking wolves.”は弱い動物が狼の群れに放り投げられたような、そんなひどい状態にロビーが陥れられたことを意味します。

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セシリアは怒りを抑えられないロビーをなだめます。この時セシリアがロビーに対して言う“Come back. Come back, come back to me.”は何度かこの映画の中で繰り返される言葉であり、映画を最後まで観た時、その言葉の持つ本当の意味がわかります。

ブライオニーは窓の外を見つめています。乳母車を押しながら歩道を歩く老婆が見えます。

このカットは脚本にも明記されていますので、何らかの意図があって挿入されたものと考えられます。

ここでブライアンさんがクラス全体にひとつの問いかけをしました。

「この老婆にはどんな意味があるのか? ブライオニーが見ていることの意味は何なのか?」

実に興味深い問いかけです。

そのヒントは、あとに続くセシリアのセリフに隠されています。

CECILIA: “Briony, there isn't much time.”

セシリア:「ブライオニー、あまり時間がないの」

ここでセシリアが言っているのは、ロビーは6時に兵舎に帰る(to report for duty)のであまり時間がない、ということですが、これも映画を観終わった時、そこにはもうひとつの意味があるということがわかるという仕掛けになっています。

セシリアとロビーは、自分の罪を償いたいというブライオニーに対して、偽証であったこと、あの時本当に起こったこと、ブライオニーが実際見たことを書面にするように告げます。

しかし、皮肉にも真犯人は既に法の手を逃れている(immune)ことが明らかになります。

それでも、ロビーは言います。

ROBBIE: Just do as we have asked of you. Write it all down, just the truth, no rhymes, no embellishments, no adjectives. And then leave us be.

ロビー:「とにかく言われたことをやれ。真実だけを全部書くんだ。韻を踏む必要はない。誇張はなし。形容詞もいらない。それだけやったら、二度と目の前に現れるな!」

BRIONY: I will, I promise.

ブライオニー:「わかったわ。約束する」

そして、ブライオニーは静かに去っていきます。

走る地下鉄の中。車内のライトが点滅するたびに轍の軋む音が重なります。

カメラは正面を見据えたブライオニーの顔を捉えています。

画面が暗転します。

ふつうならここで映画は終わるでしょう。

少女の嘘によって、ある男女の運命が狂う。

成長した少女は偽証を認め償おうとする。

時すでに遅く彼女の証言を裏付ける唯一の証拠をあてにすることができない。

果たされなかった贖罪を背負って彼女は生きていく…。

もし、そこで終わっていたら…

「ミステリー的要素はあるが、暗く、悲しく、テンポの遅い映画」として「つぐない」は記憶されたかもしれません。

ところが、このあと最後のシークエンスによって、まったく違った結末へと導かれていきます。

少女ブライオニーの「つぐない」とは何だったのか?

次回4/15(金)のクラスでは、そのラストシーンが取り上げられます。

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