クリント・イーストウッド監督の最新作『陪審員2番』(原題:Juror#2)が日本で劇場公開されないことが映画ファンの間で「事件」になっています。
その映画は冤罪をモチーフにしていますが、イーストウッド監督は過去にも冤罪モノを撮っているのをご存じですか? それが1999年の『トゥルー・クライム』(True Crime)です。
ロッテントマトでは"a pedestrian story"(ありふれた/陳腐なストーリー)とこき下ろされています。いやいや、そんなことはないですよ。『陪審員2番』を観るまえに、あるいは観た後でもご覧になってください。過小評価されている作品だと思います。
あなたはどう思われるでしょうか?
『トゥルー・クライム』はこんな話です…
エヴェレットはかつてN.Y.で敏腕記者だった。
「あなたのような人がなぜこんな田舎町の記者をやっているの?(If you're such hot shit, why are you stuck here in Bumfuck, California?)」若い女性記者ミッシェルが言う。
「愛を求めてここに来た(Looking for love.)」エヴェレットは彼女の肩に手を回しキスをする。
「それはいい考えじゃないわ。あなたには奥さんがいるでしょ?(It's not good. Not smart. You're married and you're...)」ミッシェルはバーから出ていく。
翌朝、エヴェレットは上司のボブに呼び出される。
「我々の間には深刻な問題があるようだ(Apparently, you and I have a little problem.)」ボブが言う
エヴェレットの頭の中は言い訳で一杯だ。(確かに俺はあんたの女房と関係を持った。だがそれには…)
「ミッシェルが昨夜、自動車事故で死んだ(Michelle Ziegler was killed in a car wreck last night. )」
「え? そんなはずはない。彼女は俺とバーで飲んでいたはずだ(That couldn't be. I was with her last night.)」
彼女は“死のカーブ”でハンドルを切り損ねて亡くなった。
(俺のせいだ。飲酒運転をさせてしまった…俺が送るべきだった)
「ミッシェルの代わりにビーチャム死刑囚の取材に行ってくれ。今夜、彼の死刑が執行される。探偵の真似事はするなよ。型通りの記事だけ書けばいい」
(ミッシェルが残した資料を読めば読むほど、証拠が不自然だ。何かが匂う)
エヴェレットは目撃証言をした男に会う。
(この人物の言っていることはウソだ。ミッシェルが追っていたのは冤罪事件だった!)
今夜午前0時に刑が執行される。(死刑執行まであと10時間ほどしかない…どうするエヴェレット!)
『トゥルー・クライム』はエンタテインメントに徹したスリラー作品です。ボーッと観ていても話がすっと頭に入ってきます(そのあたりが批評家に嫌われたのでしょうか?)。
「袴田事件」の再審無罪は記憶に新しいですし、再審法改正の機運が高まっているという報道もあります。米国ではトランプ氏が来年の就任後「死刑を強力に推進する」とSNSで表明したというニュースが伝えられています。
『トゥルー・クライム』は社会を告発するタイプの映画ではありませんが、冤罪や死刑について考えるきっかけになるはずです。
肩の力を抜いて、たまにはいかがでしょうか、そんな娯楽作品も。
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